仮縫いのやり方を手縫いで基本から補正まで解説
仮縫いの最中にアイロンをかけると、布に折り跡が残って本縫い後も消えないことがあります。
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仮縫いとは何か・手縫いで行う理由と基本の考え方
仮縫いとは、本縫い(ミシンで本格的に仕立てる工程)に入る前に、しつけ糸を使った手縫いだけで服のパーツを仮に組み合わせ、シルエットやサイズを確認するための工程です。試着して体型に合っているかを確かめ、必要に応じてサイズや形を調整してから本縫いに進みます。これを「補正」といいます。
手縫いで行う理由は、「ほどきやすさ」にあります。ミシンで仮縫いをすると糸を抜いた後にミシン目の跡が生地に残りやすく、デリケートな素材では特に目立ちます。しつけ糸による手縫いなら簡単に糸を引き抜けるため、修正がスムーズです。これが基本です。
仮縫いには大きく2つの意味があります。ひとつは「本番の布をしつけ糸で縫って試着する」やり方、もうひとつは「シーチングという安価な布で試作品を作る(トワルを組む)」やり方です。
- 本番布での仮縫い:フルオーダーのジャケットやドレスなど、体型にぴったり合わせたい場合に使う伝統的な手法。
- シーチングでの仮縫い:洋裁初心者や自作パターンのチェックに向いており、本番布を無駄にしないメリットがある。
どちらにも共通するのは「後でほどきやすく縫う」という原則です。つまり、細かく丁寧に縫いすぎてはいけません。
仮縫いの大切な注意点として、仮縫い中は縫い代にアイロンをかけてはいけません。修正が生じた場合、折り跡が残って本縫い後もきれいに消えなくなるからです。縫い代を倒したい場合は、手で押さえるか、後述する「押さえじつけ」という手縫いの技法を使います。意外な落とし穴ですね。
参考:仮縫い方法と補正の基礎が体系的にまとめられた専門サイト
仮縫いに必要な道具・しつけ糸の選び方と準備
仮縫いを始める前に、道具をきちんと揃えることが仕上がりの質に直結します。必要なものは多くありませんが、特にしつけ糸の選択と準備が重要です。
🧵 必要な道具リスト
| 道具 | 選び方のポイント |
|---|---|
| しつけ糸(しろも) | 綿製・撚りが甘いものを選ぶ。手で引けば切れるくらいの強度がちょうどよい |
| 手縫い針 | 生地の厚みに合った太さを選ぶ。普通地なら7〜9号が目安 |
| まち針 | 布を合わせるときの仮固定に使う |
| ハサミ | 裁ちばさみと糸切りばさみの2種類を用意 |
| チャコペン or 切りじつけ用しつけ糸 | 印付けに使う |
しつけ糸は「しろも」とも呼ばれ、綿でできた撚りの弱い糸です。普通の縫い糸より強度が低く、手で引っ張れば簡単に切れるのが特徴で、これが仮縫いに向いている理由です。色は白や生成りが一般的ですが、白地の生地で見にくい場合は「いろも(色物のしつけ糸)」を使うと作業しやすくなります。
しつけ糸が「かせ」(刺繍糸のような束)の状態で売られている場合は、そのまま使うと絡まる原因になります。束をほぐして輪っかにしてから2か所ほどを端切れで縛り、輪の片側をハサミで切って束ねると、1本ずつきれいに引き出せます。これは使えそうです。
糸の長さについては、仮縫いに使うしつけ糸は50〜60cm程度を目安にします。それ以上長くすると縫っている途中で絡まりやすく、かえって時間がかかってしまいます。玉結びは不要で、縫い始めは1針返し縫いするか、そのまま2〜3回同じ場所を縫えば固定できます。
手縫いで行う仮縫いの基本的なやり方・縫い方の手順
手縫いによる仮縫いの縫い方は「並縫い(なみ縫い)」が基本です。表・裏・表・裏と交互に針を進める、最もシンプルな縫い方で、後でほどきやすいため仮縫いに最適です。
基本の並縫い(仮縫い用)の手順
1. しつけ糸1本どりで針に通し、玉結びはせず、縫い始めに1針返し縫いをして糸を固定する。
2. 出来上がり線(仕上がり線)の上を1〜2cm程度の粗い針目で並縫いしていく。
3. 縫い終わりも1針返し縫いするか、輪を作って糸端を通して止める。
針目の大きさは、通常の手縫いより大きめにします。目安は表に出る針目が1〜2cm、裏に出る針目が0.2〜0.3cmの「一目落とし」縫いです。これを「大小の針目」とも呼びます。針目が小さすぎると、後でほどく際に糸を引き抜くのが大変になります。粗めが基本です。
厚手の生地(ウールなど)の場合は、一度にすくって縫う「置き縫い」が難しいため、1針ごとに突き通す「刺し縫い」で進めます。台の上に布を置いたまま縫う「置きじつけ」も、布がずれにくい方法としてプロの洋裁師も活用しています。
仮縫い中の縫い代の処理(押さえじつけ)
仮縫いの途中で縫い代を倒したいとき、アイロンは使えません。そこで使う技術が「押さえじつけ」です。縫い代を手で倒してから、表から一目落としで押さえるように縫います。こうすることで縫い代が起き上がらず、試着時にシルエットをきちんと確認できます。
パーツごとの仮縫いの順序は以下のとおりです。
- ダーツ → 出来上がり線どおりにダーツ先に向かって縫い、縫い始めのみ返し縫い(先端は返し縫い不要)
- 肩線・脇線 → 出来上がり線より0.5cm縫い代側から始め、縫い始め・終わりは返し縫い
- 袖(袖下・ダーツ) → 身頃と同様に縫い、袖山はしつけ糸2本どりで二重のぐし縫いをして糸を引き、袖付け寸法に縮める
- 袖付け → 力がかかりやすく、試着中にしつけ糸が切れやすいため、縫い付けず「横ピン(まち針を横に刺す方法)」で留めるだけでもよい
参考:しつけの針目の種類(一目落とし・二目落とし・斜めじつけ)など詳細な解説
シーチングを使った仮縫いのやり方と補正のステップ
初心者が本番布を無駄にせずに仮縫いを行う方法として、「シーチングを使った仮縫い(トワル)」が広く推奨されています。シーチングとは、綿の太い糸を平織りにした安価な白っぽい生地で、もともとシーツ用布として作られたことからその名があります。1mあたり数百円で購入できるため、高価な本番布の代わりに使うコスト削減策として非常に有効です。
シーチングを使った仮縫いの手順
まずシーチングを準備し、スチームアイロンをかけて布目を整えます。次にパターン(型紙)をシーチングの上に置き、出来上がり線をシャーペンで書き写します。縫い代は少し多めにつけてカットします。はぎ目・袖付けは1.5〜2cm、裾は6cm程度が目安です。多めの縫い代は、試着・補正のときにサイズをずらせる余裕になります。
縫い合わせる際は、形が確認できればよいのでロックミシンや端処理は不要です。ミシンを使う場合は針目を大きめに設定します。袖付けはミシンより手縫いのほうが細かく調整しやすいため、手縫いで細かめに縫う方法がおすすめです。
試着は実際に着るときと同じインナーをつけて行います。着てみてしわ・つれ・きつさが出た場合は、原因箇所のしつけをほどいてまち針で調整します。
代表的な補正パターン
- いかり肩のしわ(肩に横じわ):肩先の縫い代をほどき、しわが消えるまで縫い代を出す → 出した分だけ肩線を型紙に書き足す
- なで肩のしわ(肩から斜めにしわ):肩先をまち針でつまんでしわをとり → その分を肩線で下げて型紙を書き直す
- 脇の下の横じわ(胸回りが不足):脇線の腋の下をほどき、縫い代を出してしわがなくなる位置を確認 → 不足分を前後で2等分して型紙を修正
補正が終わったら、縫い目をすべてほどき、布にアイロンをかけて折り跡を平らにします。修正した型紙を使って印を付け直し、いよいよ本縫いへと進みます。ここが条件です。
参考:シーチングを使った仮縫い・試着・補正のステップをわかりやすく解説
パターンができたら仮縫いをしてみよう!シーチングを使う仮縫いのやり方 | 洋裁ブログ
仮縫いの「手縫いしつけ」を省ける?布用のりや両面テープとの使い分け
「仮縫いは必ず手縫いでしつけしなければならない」と思い込んでいる人は少なくありません。しかし実際には、工程や生地の種類によって、手縫いのしつけと道具を使った仮止めを上手に使い分けることが現代の洋裁では一般的です。これは意外ですね。
仮止めに使える道具の比較
| 方法 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| しつけ糸(手縫い) | ウール・シルクなど繊細素材・本格的な仮縫い全般 | 縫う手間があるが最も確実 |
| まち針 | 直線の仮止め・厚地の袖付け仮止め | 生地を傷つけないよう注意 |
| 布用両面テープ | ファスナー・ポケットなど直線部分の仮止め | 粘着跡が残る素材は不可 |
| 布用スティックのり・デンプンのり | 裏地付き仕立てのポケット袋布など | アイロンで押さえると定着しやすい |
| 水溶性しつけ糸 | 縫い目に残しても水洗いで消える仮止め | 水で洗える素材に限る |
特に「布用のり」は仮縫いの補助として活用度が高く、表から見えない縫い代部分に少量のスティックのりやデンプンのりをつけてアイロンで押さえるだけで素早く仮固定できます。ただし粘着剤が繊維に残りやすい素材もあるため、必ず端切れでテストしてから使いましょう。
一方、ウールなどの繊細素材や、補正のために着用チェックが必要な工程では、やはりしつけ糸による手縫いが最も安全で確実です。補正で縫い目をほどいたときに跡が残らず、何度でもやり直せます。
仮縫いに手縫いが必要な場面と、道具で代用できる場面を区別することで、作業時間を大幅に短縮できます。時間の節約につながりますね。たとえば直線のファスナー付けは両面テープで仮止めし、曲線の袖付けや試着前の縫い合わせは手縫いのしつけを使うという組み合わせが効率的です。
なお、水溶性しつけ糸は一般の手芸店でも取り扱いが増えており、縫い目の中に残ったまま洗濯すると自然に溶けて消えます。ミシンで本縫いする際の「縫いずれ防止」のためにしつけを残したい場合に非常に便利なアイテムです。これだけ覚えておけばOKです。
参考:しつけ糸の種類・使い方・切りじつけなど、しつけの基本を初心者向けに解説
しつけ糸の使い方。クオリティーの高い作品をつくるために | ぬいびと
仮縫い手縫いで初心者が陥りやすい失敗と正しいやり方
仮縫いを手縫いで行う際、初心者がつまずきやすいポイントは明確にいくつか絞られています。あらかじめ知っておくことで、時間の無駄や材料の損失を防げます。
❌ よくある失敗① 「仮縫いなのに細かく縫いすぎる」
丁寧に仕上げようとして針目を細かくしてしまうと、後でほどくときに糸が布の繊維に絡みつき、抜くのに非常に手間がかかります。仮縫いの針目は1〜2cm程度の粗さが正解です。丁寧に縫わないのが原則です。
❌ よくある失敗② 「縫い代を仮縫い中にアイロンで倒す」
修正が必要になったとき、アイロンをかけた折り跡が布に残って本縫い後まで跡が消えないことがあります。仮縫い中の縫い代の倒し方は「押さえじつけ(手で倒して表から一目落としで縫う)」を使うか、まち針で押さえるだけにしましょう。
❌ よくある失敗③ 「シーチング仮縫いで縫い代を少なくしすぎる」
縫い代が少ないと、試着後の補正でサイズを出したいときに布が足りなくなってしまいます。はぎ目・袖付け部分で1.5〜2cm、裾は6cmという目安を守りましょう。
❌ よくある失敗④ 「袖付けをしっかりしつけ縫いしてしまう」
袖付けは試着中に力がかかりやすく、しっかり縫いすぎるとほどくのが大変になります。仮縫いの袖付けは、まち針を横に刺すだけで留めておくか、粗い手縫いにとどめておくのがポイントです。
❌ よくある失敗⑤ 「試着の際にインナーを着替えない」
着心地やシルエットは着用するインナーの厚みで大きく変わります。ジャケットならシャツを着た状態で、ワンピースならブラジャーを着けた状態でというように、実際に着るときと同じインナーをつけて試着しましょう。
補正後の処理でも忘れやすい手順があります。補正が終わったら縫い目をすべてほどき、布にアイロンをかけて縫い代の折り跡を完全に消すこと、そして修正済みの型紙を布に当てて印を付け直すことが必要です。この2ステップを省くと、本縫いで狂いが生じます。ここに注意すれば大丈夫です。
仮縫いは本縫いの「リハーサル」ですが、だからといって雑に行えばよいわけではありません。「ほどきやすく縫う」「アイロンを使わない」「縫い代は多めに取る」という3つの原則さえ守れば、初めての仮縫いでも十分な成果が得られます。結論はこの3原則です。
参考:仮縫いで失敗しないコツと手芸における仮縫いの広い意味をわかりやすく紹介

